溶融亜鉛メッキとは
溶融亜鉛メッキとは、鉄などの鋼材を高温で溶かした亜鉛に浸して表面を覆う技術のことです。亜鉛の皮膜が大気や液体などとの接触を防ぎ、錆や腐食から鋼材を守るはたらきがあります。
ここでは、溶融亜鉛メッキの特性や工程、メッキを施すメリットや注意点などを、まとめて解説します。
溶融亜鉛メッキの作用
溶融亜鉛メッキは、「保護皮膜作用」と「犠牲防食作用」という2つの作用で、鋼材を錆や腐食から守ります。
保護皮膜作用
溶融亜鉛メッキを施すことで、皮膜の表面に緻密な保護皮膜が形成されます。これにより、空気や水などとの接触を防ぎ、錆や腐食の進行を抑えられます。
犠牲防食作用
メッキ皮膜に傷がついた際に、周りの亜鉛が溶け出して鋼材を保護する作用です。鋼材表面が露出するような傷でも、亜鉛が溶け出すことで鋼材を保護し、腐食の進行を防ぎます。
溶融亜鉛メッキのメリット
溶融亜鉛メッキ以外にも、鉄の鋼材を錆や腐食から守る表面処理法は複数あります。
ただ、溶融亜鉛メッキには、他の表面処理法と比べて以下のメリットがあります。
耐食性に優れている
溶融亜鉛メッキは、保護皮膜作用と犠牲防食作用により優れた耐食性を保持します。耐用年数は、海岸地帯で25年、都市・工業地帯で62年、田園地帯では113年とされます(メッキ付着量が550g/m2の場合 ※)。
大気中だけでなく、土壌内やコンクリート中といった環境でも、鉄の寿命を延ばしてくれます。
※出典:「JIS H 8641 溶融亜鉛めっき(2007)」より
経済的
防食効果が非常に長いため、メンテナンスの必要がなく、ランニングコストを抑えられることも溶融亜鉛メッキの特徴です。
なお、溶融亜鉛メッキはイニシャルコストが高いというイメージがありましたが、最近では他の表面処理法と比べて初期費用の差はほとんどなくなっています。
均一に表面処理できる
高温で溶かした亜鉛に鋼材を浸して処理をするため、均一な皮膜を作れます。複雑な形状の鋼材や、パイプ・タンクの内側など目に見えない場所でも、隅々まで皮膜を形成することが可能です。
また、鉄と亜鉛は合金化反応で密着しているため、一般的な塗料よりも剥離しにくいことも、溶融亜鉛メッキの特徴です。
溶融亜鉛メッキを施す工程は、以下の通りです。
【STEP1】脱脂
前処理として、鋼材を脱脂液(苛性ソーダ水溶液)に浸し、表面に付着した油脂や塗料を除去します。油脂が残っていると、不メッキの原因になります。
処理後、脱脂液を水で洗い流します。
【STEP2】酸洗
次に、酸洗液(塩酸や硫酸水溶液など)に浸し、表面に付着した錆などを溶解除去します。
これも、錆が残っていると不メッキの原因になるため必要な前処理です。処理後、酸洗液を水で洗い流します。
【STEP3】フラックス
フラックス(塩化亜鉛アンモニウム水溶液)に浸し、素地表面にフラックス皮膜を形成します。
この処理により、錆の防止や鉄と亜鉛の合金反応を促し、耐食性に優れた溶融亜鉛メッキを実現します。
【STEP4】メッキ
フラックス後の鋼材が乾燥したら、溶融した亜鉛に浸してメッキ皮膜を形成します。
鋼材の材質や形状によって、適合する亜鉛の付着量は異なります。付着量は、亜鉛の温度と浸漬時間で管理します。
【STEP5】冷却・仕上げ・検査
メッキを施した鋼材を、水で冷却します。
その後、不メッキの補修などの仕上げ工程や検査を経て、出荷されます。
溶融亜鉛メッキ規格
溶融亜鉛メッキの規格は、JISで規定されています(JIS H 8641)。
種類 | 記号 | 付着量 | 使用例 |
---|---|---|---|
1種A | HDZ A | - | 厚さ5mm以下の鋼材・鋼製品、鋼管類、直径12mm以上のボルト・ナット、厚さ2.3mmを超える座金類など。 |
1種B | HDZ B | - | 厚さ5mmを超える鋼材・鋼製品、鋼管類、鋳造品類。 |
2種35 | HDZ 35 | 350g/m2以上 | 厚さ1mm以上2mm以下の鋼材・鋼製品、直径12mm以上のボルト・ナット、厚さ2.3mmを超える座金類など。 |
2種40 | HDZ 40 | 400g/m2以上 | 厚さ2mmを超え3mm以下の鋼材・鋼製品、鋳鍛造品類。 |
2種45 | HDZ 45 | 450g/m2以上 | 厚さ3mmを超え5mm以下の鋼材・鋼製品、鋳鍛造品類。 |
2種50 | HDZ 50 | 500g/m2以上 | 厚さ5mmを超える鋼材・鋼製品、鋳鍛造品類。 |
2種55 | HDZ 55 | 550g/m2以上 | 過酷な腐食環境下で使用される鋼材・鋼製品、鋳鍛造品類。 |
※出典:「JIS H 8641 溶融亜鉛めっき(2007)」より
加工するうえでの注意点
溶融亜鉛メッキの特徴として、均一な表面処理ができることが挙げられますが、密閉した部分のある製品の場合、不メッキになる場合があります。
また、密閉構造や空気のたまりやすい箇所がある製品の場合、空気の膨張により水蒸気爆発が生じる可能性があります。このような製品の場合、切り欠きや空気抜き孔を設けるなどの対策が必要です。
メッキやけについて
メッキやけとは、鉄と亜鉛の合金反応が進み、合金層がメッキ表面まで発達した状態のことです。見た目は、光沢のない暗灰色になります。
メッキやけは、鋼材に含まれる化学成分が亜鉛との合金反応を促すことで生じますが、耐食性能への影響はありません。
白さびについて
白さびとは、メッキ表面に白い粉が付着したように見える現象です。雨水や結露、海水などが付着しやすい環境で発生します。
見た目の印象はよくありませんが、耐食性への影響はありません。
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